*** First thing first
大きくは、
+++「とまる」は
「静」
「何かの運動を消す」
+++「とどまる」は
「(潜在的に)動」
「本当は動きたいものを、けっこう無理矢理に、とめる」
だと考えます。
***例文での説明。
OK: 「心臓がとまる」
NG: 「心臓がとどまる」
その他、「とまる」、「とどめる」の例文を比べて見ましょう。
+++【とまる】
「電車がとまる」 (停止しました。動きません)
「咳がとまる」(停止しました。もう咳は出ません)
「電気がとまる」(停電です。電気は来ません)
「鳥が木にとまる」(木の上で動かないでいます)
「ポスターを画鋲で壁にとめる」(壁に固定されました。もう動きません)
※ 上記の例文を、「とどまる」に変えることはできません。たとえば、「ポスターを壁にとどめる」というと、何だかポスターが未だにグズグズ動きだしそうです。
+++ 【とどめる】
-1.「家族を郷里にとどめたまま、兵役に出る」
(家族としては、できるものならついていきたいが、無理矢理に郷里にとめおかれている、という印象)
- 2.「事件の一部始終を記録にとどめる」
(ほおっておくと散逸しそうな事件の全容を、がんばって記録する、というイメージ)
- 3.「被害を最小限にとどめる」
(ほおっておくとますます広がりそうな被害を、がんばってくいとめる、というイメージ)
※ 上記の例文を、「とめる」に変えることはできません。
*** 「とどめる」の使用頻度がそれほど多くない理由
上記3例は、やや文章的な表現です。いずれも簡単なことばに言い換え可能。
「家族を郷里に残して、兵役に出る」
「事件の一部始終を記録する/記録に残す」
「被害を最小限に押さえる/くいとめる」
一方、「とめる」は基本語なので、他の言葉への置き換えはむずかしい。
「鳥が木にとまる」など、私にはほかの言い方が見つかりません。
****語源からの説明
「とまる」は、「物が進行して、ある地点まで来て、そこで運動がなくなること」です。
「たまる(溜まる)」と同語源という説があります。
「とどまる」は、「物が進行して、ある地点まで来て、そこで運動がなくなり、進行は終わるが、しかしその場所での小さな動きは終わらない」あるいは「動こうとするものを動かないようにする」ということです。後者の意味で使われることが多いように思います。
「とどまる」の「とど」と「ただよう(漂う)」の「ただ」と同じという説があります。どちらも小さく無秩序に動いている点は同じです。
*** 漢字からの説明
とめるでは、「止める」「留める」「停める」「泊める」という漢字が使えます。
しかし、とどめる、では、「止める」「留める」しか原則、使えません(※ ATOK調べ)
「停める」は、「完全に動きが止まる」イメージです。(停止、停電、停車)
「泊まる」は、「今夜はもう動かない
ここで寝て休む」というイメージです。
ちなみに「とどめる」は「駐める」とも書けます。これは駐屯兵団という言葉があるように、完全に停止してはいない、やる気に溢れ、アクティブに動いている、というイメージがあります。
「駐車」と「停車」を比べてみましょう。駐車は、あくまで「一時的に車をparkさせること」です。しばらくしたら、また動き出す、動く気満々です。一方、「停車」は「動いている車の動作をやめさせることです。完全にSTOPします」。
「停車!」という命令形はあっても、「駐車!」とい命令形は原則ありません。
これもまた、「とめるは、静、とどめるは(潜在的に)動」をあらわしています。
*** 「とまる」「とどまる」がexchangeable な例
なかなか思いつきません。唯一、以下が思いつきました。
A:「こうして一箇所にとどまっていても、どうにもならない」
B:「こうして一箇所にとまっていても、どうにもならない」
どちらかといえばAの方が適切だと思います。「本当はとどまりたくない(動きたい:潜在的に”動”」という状態だからです。
(コメント欄につづく)