外国語を学ぶ上で、一番身につけるのに苦労するのは、実は発音ではないかと思います。どんな言語でも、ネイティブに近い発音を習得するのは難しいですよね。

そんな外国語の中で、スペイン語日本語に非常によく似た音を持っているため、日本人にとって、とても簡単に喋ることができる言語だと言えるでしょう。

初めて見る単語や地名も、書いてある通りにローマ字読みすれば、問題なく伝わります。
そんなスペイン語ですが、やはり少しだけ日本語と違う部分があります。しかしその違いさえ覚えておけば、スペイン語の発音に困ることはありません。

今回は、スペインの大学院を卒業し、10年以上スペインで暮らした筆者が、日本人にも分かりやすいスペイン語の発音のコツをお伝えしたいと思います。

スペイン語の発音は基本的にローマ字読み

スペイン語は日本語と同じ5つの母音(a、e、i、o、u)から成る言語です。このためスペイン語は、日本語とほとんど同じ音で構成されています。その上、母音子音の出現頻度が日本語にかなり近いので、日本人はスペイン語の綴りをローマ字読みするだけで、初心者でもかなりネイティブに近い発音を行うことができます。
ただし、やはり別の言語ですので、日本語と違う音や、気を付けて発音しないと別の音と混同されやすい音が存在します。そのような発音に気を付ければ、スペイン語の発音に難しいことは何もありません。

スペイン語の発音の基本ルール

ここではスペイン語発音基本的なルールを紹介します。この部分だけは、日本語のローマ字読みと全く違う読み方をするので、見かけたときは少しだけ注意してください。

ルール①:「h」は発音しない

h」は表記上用いられますが、発音はしません。「h」が付いていても、発音はha(ア)、he(エ)、hi(イ)、ho(オ)、hu(ウ)になります。

例)
【小麦粉】
harina(アリーナ)
【乗り物】
vehículo(ベイクロ)
【人参】
zanahoria(サナオリア)

ルール②:「g」と「j」の発音はハ行になる

スペイン語は「h」を発音しない代わりに、「j」および「g」の一部がハ行の音を担っています。
「j」は全ての音がハ行のja(ハ)、je(へ)、ji(ヒ)、jo(ホ)、ju(フ)の音で発音されます。

例)
【日本】
Japón(ハポン)
【若い】
joven(ホベン)
【息子】
hijo(イホ)

「g」の音のうち、eiが付くものが、ge(へ)、gi(ヒ)のハ行の音で発音されます。

例)
【天才】
genio(へニオ)
【天使】
ángel(アンヘル)
【宗教】
religión(レリヒオン)

ルール③:「r」が2つ続く場合は巻き舌になる

スペイン語単語の最初が「r」の場合と、「rr」とrが2つ続く単語の場合は、巻き舌の「r」の発音になります。
上あごのあたりに舌先を軽く当てて、勢いよく息を吐きだします。舌先が振動して、「ルルル」と音が出せるまで練習してみましょう。
文章の途中や会話の最中に巻き舌の「r」があると、最初は発音に苦労するかと思いますが、文章を音読したり、スピーキングの練習を続ければ、いつの間にかスムーズに発音できるようになるはずです。

例)
【ラジオ】
radio(ラディオ)
【川】
rio(リオ)
【ジョッキ】
jarra(ハーラ)
【蝉】
cigarra(シガーラ)

ルール④:「l」が2つ続く場合の発音はリャ・ジャ

スペイン語の言葉には「l」を2つ続ける「ll」という音があります。発音は、ジャもしくはリャに近い音になります。正確には、ジャとヤの中間のような音なのですが、リャに聞こえることもあります。ヤ行を発音する口でラと言うつもりで息を出してください。

例)
【パエリア】
paella(パエジャ、パエリャ)
【鍵】
llave(ジャべ、リャベ)
【リャマ(動物)】
llama(ジャマ、リャマ)

※「ll」は国や地域による方言が反映されやすい音でもあります。スペインのマドリードは「ll」をジャと発音しますが、アルゼンチンではシャと発音します。例えばpaellaは、マドリードでは「パエジャ」、アルゼンチンでは「パエシャ」と発音されます。

ルール⑤:「y」の発音はジャ・ヤ

スペイン語の「y」は、ジャもしくはと発音します。日本語のヤの音にかなり近いのですが、スペイン語の「y」は摩擦音が多く含まれるため、耳で聞いたときに、ジャかヤのどちらか、もしくはその中間の音のように聞こえる時もあります。
発音をする場合、はじめは口に出しやすい方の音で試してみましょう。

例)
【昨日】
ayer(アジェール、アイェール)
【卵黄】
yema(ジェマ、イェマ)
【大きい】
mayor(マジョール、マヨール)
※接続詞の「y」、および語尾につく「y」の発音はイになるので注意してください。
【とても】
muy(ムイ)
【~と】
y(イ)

ルール⑥:「n」はナ行、「ñ」はニャ行の発音

スペイン語には「n」のほかに「ñ」(エニェ)という独自のアルファベットがあります。n」は日本語のナ行と同じ発音ですが、「ñ」はña(ニャ)、 ñe(ニェ)、 ñi(ニ)、 ño(ニョ)、 ñu(ニュ)と発音します。

例)
【ヌー(動物)】
ñu(ニュ)
【スペイン】
España(エスパーニャ)
【人形】
muñeca(ムニェカ)

ルール⑦:「z」「ci」「ce」は英語のthに似た発音

スペイン語の「z」「ci」「ce」の発音は、カタカナで書くとサ行になってしまうのですが、日本語のサ行とは異なる発音をします。
s」の音は、日本語のサ行を発音するときとほぼ同じ口の動きでいいのですが、「z」と「ci」「ce」を発音するときは、英語のthの発音のように前歯で舌先を軽く噛んで、その隙間から音を出すつもりで発音する必要があります。

例)
【夕食】
cena(セナ)
【台所】
cocina(コシナ)
【心臓】
corazón (コラソン)
【スポンジケーキ】
bizcocho(ビスコチョ)

※カタカナで表記すると違いが分かりにくいのですが、これら「z」「ci」「ce」の音を「s」と同じように発音してしまうと、ネイティブには意味が通じなくなったり、別の単語だと勘違いされることがあるので、「z」「ci」「ce」を発音するときは注意しましょう。

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スペイン語の発音のコツ

次にスペイン語発音コツを解説します。日本人にとっては同じ音のように聞こえるため、発音の時にも区別がしにくいものがあるのですが、ネイティブにとっては私たちが思っている以上に違って聞こえるため、意識してそれぞれの発音を区別するようにしましょう。
最初は難しいかもしれませんが、ビデオや動画などでネイティブの口の動きをよく観察して、ゆっくり丁寧に話すことを心がければ、いつの間にか正しい発音が身についているはずです。

コツ①:「l」と「r」の発音

スペイン語の「l」と「r」は、カタカナで発音表記をすると、両方とも同じラ行の音のように見えるのですが、実際の発音は異なっています。
「r」は日本語のラ行とほぼ同じ音になります。ただし「ルール③:「r」が2つ続く場合は巻き舌になる」で解説した通り、「r」が文字の一番最初に来る場合「rr」と同じ巻き舌のラの音になるので注意しましょう。
「l」の音は、上の前歯と歯茎の裏側に軽く舌先を付け、そのまま舌の両脇の隙間から息を出す感覚で音を出して発音します。日本語にはない音なので、発音のCDやオンラインの発音アプリなどを使って、何度も繰り返し聞いて、まずは耳を慣らすことから始めてください。

「l」と「r」の練習に役立つ単語を紹介します。
ここで紹介した単語の発音を、音声サイト発音アプリ電子辞書などで再生して、違いを聴き比べてみましょう。耳でそれぞれの違いが分かるようになったら、今度は声に出して発音してみましょう。

【カエル】
rana(ラナ)
【羊毛】
lana(ラナ)
【武器】
arma(アルマ)
【魂】
alma(アルマ)
【王の/本物の】
real(レアル)
【忠実な】
leal(レアル)
【オウム】
loro(ロロ)

コツ②:記号付き文字の発音

スペイン語には、しばしばアルファベットに記号が付いている文字を見かけることがあるかと思います。「ルール⑥:「n」はナ行、「ñ」はニャ行の発音」で紹介した「ñ」(エニェ)などは、その代表と言えるでしょう。
これ以外に、スペイン語の中に現れる記号には「アクセント」と「ウムラウト」があります。

アクセント」は母音の上に置かれる「´」の記号で、アクセント付きの母音は、その単語の中で他の母音よりも強く発音します。

例)
【木】
árbol(アルボル)
【駅】
estación(エスタシオン)
【コンパス】
compás(コンパス)

ウムラウト」は母音の上に置かれる「¨」の記号の事です。スペイン語ではuにウムラウトの付いた「ü」のみが存在します。
特に「güe」と「güi」に使われる以外、ウムラウトを目にすることはないでしょう。
「güe」、「güi」はそれぞれ「グエ/グウェ」、「グイ/グウィ」と発音します。スペイン語でウムラウトを使わず「gue」、「gui」と書いた場合、それぞれ「ゲ」、「ギ」の発音になります。このため、gu+e、gu+iの発音をしたいときには、「ü」を使ってグの音を独立させる必要があります。

例)
【恥】
vergüenza(ベルグエンサ/ベルグウェンサ)
【ペンギン】
pingüino(ピングイノ/ピングウィノ)
【コウノトリ】
cigüeña(シグエニャ/シグウェニャ)

スペイン語の発音は聞いて覚えるのがおすすめ

スペイン語発音は日本語によく似ているため、逆にカタカナの発音に引っ張られて、「l」と「r」、「z」「ci」「ce」と「s」の発音を混同してしまうことがあります。私たちにとって大した違いがないように見えても、スペイン語ネイティブにとってはまったく違う発音に聞こえてしまうため、言いたい言葉が伝わらないという困った事態が発生することもあります。
そんな弱点を減らし、ネイティブのような発音を練習するには、生のスペイン語を耳にするのが一番です。スペイン語を聞くには映画や動画を観るのがいいのですが、長い文章が聞き取りにくいときは、動画の速度を遅くし、スペイン語字幕も付けてゆっくり発音を聞きこなすことをお勧めします。慣れてきたら、動画の音声を聞きながら、それを真似して発音する「シャドーイング」で発音練習をしてみましょう。
また、「l」と「r」、「z」「ci」「ce」と「s」など、特定の発音に特化して練習したい場合は、スペイン語学習サイトやアプリで音声問題や発音の問題を解いてみましょう。
最初は難しくても、何度も繰り返して耳にするうちに少しずつ違いが聞き取れるようになりますし、耳で区別できるようになれば、楽に発音できるようになっていきます。

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まとめ

この記事で紹介したスペイン語独特の発音や、「l」と「r」など、日本人にとって区別しづらい発音に注意すれば、スペイン語の発音に難しいことは何もありません。
しばしばネイティブのスピーキングのスピードに押されて、できるだけ早く喋るようになることが上達のしるしだと思うかもしれませんが、喋る速度を上げるより、それぞれの音を正確に発音していくことが、スピーキング上達の大切な第1歩です。
最初はゆっくり丁寧に発音して、正しいスペイン語を身に付けましょう。

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