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おやすまない話 #01 ~ 私の会社 ~
おやすまない話 #01 ~ 私の会社 ~
11:52
28 okt. 2026 14:51
Omschrijving
10月も後半になりました。夜は寒くなってきました。 夕方5時を過ぎると、外はもう真っ暗です。 皆さんはどんな場所で働いていますか? 私の昼の職場は、海の近くにある古い倉庫会社です。 建てられてから80年ほど経っています。海のすぐ目の前です。 夜になると冷たい風が吹き、潮の匂いがします。 私の仕事は、事務所で事務作業をしています。 倉庫の中には、荷物を運ぶ作業員がいます。 事務所と倉庫は300mほど離れています。 今は夕方5時の定時に帰ることができます。 ですが、5年ぐらい前までは夜の10時や11時まで残業していました。 11月と12月は、1年で最も忙しい時期でした。 そんな残業していた時のお話を始めたいと思います。今でも時々思い出す日があります。 その日は、夜の10時半を過ぎていました。仕事が遅くなってのことです。 事務所にいる私と、作業員のAさんとBさん、3人だけでした。 作業員のBさんは先に仕事を終えて事務所に来て休んでおり、私と一緒に書類の確認をしていました。 もう1人の作業員、Aさんだけが倉庫の最後の見回りに残っていました。 私とBさんが仕事の片付けをしていると、事務所のドアが勢いよく開きました。 Aさんでした。 Aさんの顔はとても白くなっていて、息が上がって声も手も震えていました。 そして、こう言ったんです。 「倉庫の中に誰かがいる」 私とBさんはAさんの顔を見ました。 Aさんはその時の様子を話してくれました。 Aさんが倉庫の奥の通路を歩いていた時、暗い棚の前に私たちの会社と同じ作業着を着た人が立っていたそうです。 AさんはBさんだと思い、「Bさん、まだいたんですか? もう帰りますよ」と声をかけました。 その人は背を向けたまま、Bさんの声で答えました。 「分かってるよ」 声はBさんとまったく同じでした。 AさんはBさんだと思って、もう一度言いました。 「鍵を閉めますよ。もう10時半です」 「分かってるよ」 同じ声、同じトーンで返ってきました。 「明日の準備ですか? 何をしてるんですか?」 「分かってるよ」 何を質問しても、同じ声、同じスピードで「分かってるよ」としか言いません。 Aさんは「あれ、何かおかしいな」と思いました。 よく見ると、真冬の寒い夜なのに、その人は薄い夏の作業着を着ていました。腕を出した半袖の服です。 寒いはずなのに、震えてもいません。 Aさんが「おかしいな、誰だ?」と思ってじっと見ていると、その人は、 「分かってるよ」 と繰り返しながら、首だけをゆっくり回してこちらを見ようとしたそうです。 怖くなったAさんは、持っていた懐中電灯と鍵を落として事務所まで走って逃げてきました。 事務所にいた本物のBさんもその話を聞いて青い顔をしました。 「俺はずっとここにいたよ」 そして私たちは大変なことに気がつきました。 Aさんが鍵を落としたということは、倉庫のドアが開いたままで、電気もついています。そのままにして帰ることはできません。 私たちは3人で懐中電灯を持って、300m離れた倉庫へ戻りました。 夜の11時前でした。 倉庫の入り口は開いたままでした。 中に入ると、風でビニールシートが揺れる音だけが聞こえます。 「誰かいますか?」 Bさんが声を上げましたが、返事はありません。 3人で一番奥の通路へ向かいました。 そこには誰もいませんでしたが、床にはAさんが落とした懐中電灯が転がっていました。 ですが、鍵が見当たりません。 Bさんがライトの光を壁に向けました。 「おい、あれ見ろよ」 壁には古い木でできたキーケースがあります。 これは今も残っているのですが、箱がボロボロで埃がたくさん積もっており、今は誰も使っていない昔のキーケースです。 その埃を被った鍵を掛けるフックの1つに、床に落としたはずの鍵がきっちりと掛けられていました。 鍵が掛かっている場所だけ、指でなぞったように埃がなくなっていました。 私たちはそれを見て何も言えなくなり、急いで鍵を取って電気を消し、シャッターを閉めて事務所に帰りました。 その後何日か経って、昔から勤めている高齢の社員の人に会う機会があり、あのキーケースについて聞きました。 その人は静かに教えてくれました。 「俺が入社したばかりの頃、その時のリーダーが事故で亡くなったんだよ。新潟で大きい地震があってな。あの日、6月なのにとても暑い日だった。真面目な人でね、誰に声をかけられても『分かってるよ』と笑って、いつも最後まで残って必ず決まった場所に鍵を戻してから帰る人。そんな人だったよ」 真冬の夜に夏の作業着を着て、同じ言葉を繰り返しながら首を回した人影。 今でもその地震の日の仕事を続けているのでしょうか。 私は幽霊が見えませんが、あのキーケースに残っていた指の跡は今でも忘れることができません。
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"Oyasumanai Hanashi" (Can't Sleep Stories / Stories That Keep You Up)
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