NINino
横光利一の『蝿』について 『蝿』とは新感覚派作家横光利一の代表作である。そのタイトル通り、一匹の蝿の眼を借りて语られる奇妙な小说である。作中では、蝿の眼に入ったものが、そのまま読者に提示され、人物についても内面描写は基本的になされない。利一は蝇の冷ややかな目を通して、異なる人物の異なる運命を描写して、人の能力の制限を掲示する同時に、自己意識を呼び覚まして、自分の人生をとらえようと呼びかけている。  小说の最後に、馬車は転落してしまったが、この馬車には色々な事情を抱えたお客たちが乗っていた。危篤の息子のもとへと急ぐ「農婦」、駆け落ちすることを決意した「若者と娘」「母と息子」「田舎绅士」、それはまさに「世の中」の、社会の中の人間の姿の絵模様のようなものだったと思っている。人間社会の「縮図」ともいうべきだと思っている。  そもそも『蝇』とは、人间と蝿とにおける生死の対比と転换をテーマとした作品である。初めに、この作品は蝇の危機から始まる。蝇はくもの網には引っ掛かるが、脱出しているのである。しかし、最後に崖から馬車が落ちる时、蝿だけが生き残り、乗客も馬も御者も死んでいってしまった。冷徹なる蝿と愚かなる人間の対立、またその「生と死」の対立が強烈すぎる。人間より、ひそやかに生きている蝿の方が生き残ったということで、命というものは大小関係なく、はかないものだと思っていた。どんな人でもただ確率のとおり、特別なこともなにもなく、死は平等に訪れると考えられている。  この作品は、途中までは冷淡なほど淡々と書かれていたが、最後は劇的な感じがした。ちっぽけな蝿は自身の力に頼って死亡から抜け出した。人間はひたすら他人に頼ってではなく、自分に頼るのほうがいいと思っている。
16 lug 2013 04:58