みなさんは「冠詞」と聞いて、すぐにそれが何と答えることができますか。
理解はしていても、日本語には存在しない表現なのでいまいち感覚がつかみづらいですよね。

ドイツ語も英語と同様、名詞には「冠詞」を付けて使います。
さらに、冠詞は名詞の性別によって形を変えます。

「ドイツ語の格って何?」
「男性名詞とか女性名詞とかって、どうやって区別するの?」

そんな疑問をまとめて解決しちゃいましょう。

ドイツ滞在歴5年、ドイツ語レベルB2、現在はドイツ人の旦那を持つドイツ大好き主婦が、ドイツ語の定冠詞と不定冠詞、格変化やその覚え方についてご紹介します。

 

ドイツ語の定冠詞・不定冠詞とは

冠詞とは英語でいう「a」や「the」のことです。
名詞の前に付けて、名詞の性質や属性を表す役割があります。

ドイツ語にも同じく冠詞が存在し、「定冠詞」や「不定冠詞」などがあります。

定冠詞と不定冠詞は名詞の性質や属性によって形を変えるため、ルールをしっかりと理解しなければなりません。

 

定冠詞

ドイツ語定冠詞は「特定の対象を指す」意味を持ち、英語の「the」にあたります。

ドイツ語ではder(デア)die(ディ)das(ダス)を使います。
なぜ定冠詞が3つあるのかというと、ドイツ語の名詞にはがあり、男性名詞はder女性名詞はdie中性名詞はdasを使って区別をするからです。
ちなみに、複数名詞の場合もdieを使います。

 

名詞の性と意味 ドイツ語 読み
男性名詞(机) der Tisch デア ティッシュ
女性名詞(かばん) die Tasche ディ タッシェ
中性名詞(本) das Buch ダス ブッフ
複数名詞(靴) die Schuhe ディ シューエ

 

不定冠詞

ドイツ語の不定冠詞は「数あるものの中から1つのものを指す」意味を持ち、英語の「a」や「an」にあたります。

ドイツ語では「ein」や「eine」で表記されます。
不定冠詞は「1つ」を表すものなので複数名詞は存在しませんが、定冠詞と同じく名詞の性によって使い分けられます。

 

名詞の性と意味 ドイツ語 読み
男性名詞(机) ein Tisch アイン ティッシュ
女性名詞(かばん) eine Tasche アイネ タッシェ
中性名詞(本) ein Buch アイン ブッフ

 

ドイツ語の格とは

」とは名詞が文中で示す役割のことで、日本語でいう「が」「の」「に」「を」を指します。
ドイツ語には1格に主格の「が」2格に所有格の「の」3格に間接目的格の「に」4格に直接目的格の「を」を使います。

使い方はおおむね日本語と同じですが、前置詞や動詞によっては最初からセットで使う「格」が決まっている場合もあるため注意が必要です。

 

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ドイツ語の定冠詞の使い方

では、改めて「定冠詞」について説明します。

格とは日本語の「が」「の」「に」「を」にあたるものでしたね。

格や性によって、定冠詞がどのように変化するか見ていきましょう。

 

定冠詞①:格変化

まずは定冠詞が格によってどのように変化するか見てみましょう。
また、この変化のことを「格変化」と呼びます。

 

男性名詞 女性名詞 中性名詞
1格 父が der Vater 母が die Mutter 子どもが das Kind
2格 父の des Vaters 母の der Mutter 子どもの des Kindes
3格 父に dem Vater 母に der Mutter 子どもに dem Kind
4格 父を den Vater 母を die Mutter 子どもを das Kind

 

冠詞を使うときは、名詞の性と格がどれに該当するのかを考えなければいけません。
そのため、名詞の性は確実に覚えておく必要があります。

また、2格では男性名詞中性名詞の語尾に「s」または「es」が付きます。

 

定冠詞②:複数形

複数形も冠詞で格を使い分けます。

 

意味 定冠詞 子供
1格 ~たちが die Väter Mütter Kinder
2格 ~たちの der Väter Mütter Kinder
3格 ~たちに den Vätern Müttern Kindern
4格 ~たちを die Väter Mütter Kinder

 

複数形で3格を作る時は、名詞の語尾に「n」をつけます。

しかし、例外として名詞が「s」と「n」で終わる複数形は語尾に「n」を付けません。

 

意味 車たち 猫たち
1格 ~が die Autos die Katzen
3格 ~に den Autos den Katzen

 

定冠詞③:名詞の性

冠詞を使うには、名詞の性を理解していなければ正しく使うことができません。
では、名詞の性別はどのように判断すればいいのでしょうか。

「父」「母」のように、男性か女性か分かりやすい名詞もありますが、「ビール」や「テレビ」の性は想像ができませんよね。
しかし、例外は多いですがある程度のルールは存在します。

例えば、名詞の語尾を見て判断できることもあります。

 

語尾に「er」「ler」「ner」「ist」「ent」「ant」がくる「人を表す名詞」は男性名詞です。

【教師】Lehrer(レーラー)
【旅行者】Tourist(ツアリスト)

 

語尾に「ei」「heit」「keit」「schaft」「ung」「enz」「ie」がくる名詞は女性名詞です。

【パン屋】Bäckerei(ベッカライ)
【親切】Freundlichkeit(フロイントリッヒカイト)

 

語尾に「chen」「lein」「ment」「um」「tum」「nis」がくる名詞は中性名詞です。

【女の子】Mädchen(メドヒェン)
【日付】Datum(ダトゥム)

 

ドイツ語の不定冠詞の使い方

では次に、ドイツ語の「不定冠詞」について説明します。

不定冠詞とは「一つのもの」を指す冠詞で、「ein」や「eine」を使うものでしたね。
会話上で初めて出てきた物や名詞にも使用されます。

定冠詞と同じく不定冠詞にも例外がありますので、しっかりと把握しましょう。

 

不定冠詞①:格変化

まずは不定冠詞によってどのように変化するか見てみましょう。

 

男性名詞 女性名詞 中性名詞
1格 ein Vater eine Mutter ein Kind
2格 eines Vaters einer Mutter eines Kindes
3格 einem Vater einer Mutter einem Kind
4格 einen Vater eine Mutter ein Kind

 

定冠詞の時と同じく、不定冠詞でも2格男性名詞中性名詞の語尾には「s」または「es」が付きます。

 

不定冠詞②:複数形

不定冠詞とはそもそも「1つの」という意味を表すため、複数形は存在しません

つまり、「今日マークは1冊の本を買います。」と言いたければ
Marc kauft heute ein Buch.(マーク カウフト ホイテ アイン ブッフ)
となりますが、

「今日マークは複数の本を買います。」と言いたい場合には冠詞は付けません
Marc kauft heute Bücher.(マーク カウフト ホイテ ブッヒャー)

ただし、複数の本の中で聞き手が特定できる場合は定冠詞を付けましょう。

「今日マークは複数のあの本を買います。」
Marc kauft heute die Bücher.(マーク カウフト ホイテ ディ ビュッヒャー)

 

不定冠詞③:付けない名詞

また、不定冠詞を付けない名詞も存在します。
それは、文章の中に数字がある場合です。

「三冊の本」
drei Bücher(ドライ ビュッヒャー)

この文章には3という数字が入っています。
複数形であっても、このような場合には不定冠詞は不要です。

ただし、複数であっても聞き手が特定できる場合には定冠詞を付けます。

「今日マークはこの3冊の本を買います。」
Marc kauft heute die 3 Bücher.(マーク カウフト ホイテ ディ ドライ ビュッヒャー)

 

ドイツ語の定冠詞と不定冠詞の使い分けの仕方

ではここで、定冠詞と不定冠詞の使い分けについて説明します。

日本語にはない表現なのでいまいち分かりづらいかもしれませんが、ポイントを押さえ、確実に理解を定着させましょう。

冠詞を正しく使えれば、ネイティブから一目置かれること間違いなしですよ。

 

使い分け①:特定可能か

定冠詞と不定冠詞の使い分けには、「その名詞が特定可能かどうか」が重要になってきます。

まず、定冠詞はder(デア)・die(ディ)・das(ダス)でしたね。
これは「その」を意味するため「定冠詞は特定できる」ことになります。

不定冠詞はein(アイン)・eine(アイネ)・ein(アイン)を使い、「1つの」を意味するため「不定冠詞は特定ができない」ことになります。

【私はその本が欲しいです。】
Ich will das Buch.(イッヒ ヴィル ダス ブッフ)

【私は本が欲しいです。】
Ich will ein Buch.(イッヒ ヴィル アイン ブッフ)

特定の本が欲しいのか、ざっくりと本が欲しいのかで冠詞を使い分けます。

 

使い分け②:既知か

冠詞は「既に知っているかどうか」も重要になってきます。

【それはパソコンです。】
Das ist ein Computer.(ダス イスト アイン コンピューター)

【そのパソコンは新しいです。】
Der Computer ist neu.(デア コンピューター イスト ノイ)

この文章が一つの会話だとすると、最初に一つのパソコンを示し、次に「その」パソコンの特徴を話しています。
このように、既出の情報の時には定冠詞を使います。

 

使い分け③:そこに存在するか

そこに存在するかどうか」でも冠詞を使い分けます。

【郵便局はどこですか?】
Wo ist die Post?(ヴォー イスト ディ ポスト)

【この辺りに郵便局はありますか?】
Gibt es in der Nähe eine Post?(ギプト エス デア ネーエ アイネ ポスト)

上の文では、郵便局がある前提で尋ねています。
逆に、下の文では「そこにあるかどうか分からないけど」尋ねています。

そこに在る前提で話をするときには定冠詞あるかどうか分からない時には不定冠詞を使用することを覚えておいてください。

 

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ドイツ語の定冠詞の例文

定冠詞と不定冠詞の使い分けを覚えるだけでも大変なのに、名詞の性や格も出てきて頭が混乱してしまいますよね。

苦手意識はたくさんの例文を見聞きすることで解消できます。

定冠詞der(デア)・die(ディ)・das(ダス)がどのように変化しているかに注目しながら例文を見てみましょう。

 

定冠詞①:基本

【その車は高いです。】
Das Auto ist teuer.

「~は」は1格なので、1格の定冠詞が付いています。

 

【その電車の窓は大きいです。】
Die Fenster der Straßenbahn sind groß.

「~の」は2格なので、2格の定冠詞が付いています。

 

【彼女はその車を売ります。】
Sie verkauft das Auto.

「~を」は4格なので、4格の定冠詞が付いています。

 

定冠詞②:間違えやすいパターン

ここでは間違えやすい例文をご紹介しますね。

 

【その家の屋根は古いです。】
Das Dach des Hauses ist alt.

「~の」は2格なので、2格の定冠詞がついています。
また、Hauseは中性名詞なので語尾に「es」を付けなければなりません。

 

【私は地下鉄で行きます。】
Ich fahre mit der U-Bahn.

この例文には定冠詞の前に「mit」という前置詞が付いています。
「mit」は3格を取るので、ここでは3格の定冠詞が付いています。

前置詞は名詞の前につきますが、格支配といってペアが決まっているものもあるため注意が必要です。

 

ドイツ語の不定冠詞の例文

次は不定冠詞の例文を見てみましょう。

ドイツ語は冠詞さえマスターすれば大分楽になります。

不定冠詞ein(アイン)・eine(アイネ)・ein(アイン)がどのように変化しているかに注目しながら例文を見てみましょう。

 

不定冠詞①:基本

【これはパンです。】
Das ist ein Brot.(ダス イスト アイン ブロート)

「~は」は1格なので、1格の不定冠詞が付いています。
また、「ist」の後に置かれる名詞は主語でなくても1格になります。

 

【これは犬の餌です。】
Das ist das Futter eines Hundes.(ダス イスト ダス フッター アイネス フンデス)

「~の」は2格なので、2格の不定冠詞が付いています。
また、「Hund」は男性名詞なので語尾に「es」を付けなければなりません。

 

不定冠詞②:間違えやすいパターン

少しレベルを上げてみましょう。

 

【これは鳥の羽です。】
Das ist die Feder von einem Vogel.(ダス イスト フェーダー フォン アイネム フォーゲル)

「~の」は2格を取りますが、前置詞の「von」を使って表現することもできます。
その場合、「von」は3格を取るので、不定冠詞は3格が付きます。

 

【私はコーヒーを飲みます。】
Ich trinke ein Glas Kaffee.(イッヒ トリンケ アイン グラス カフェー)

「~を」は4格なので、4格の定冠詞が付いています。
この時、不定冠詞は「コーヒー」ではなく「グラス」につきます。
そのため、男性名詞(コーヒー)のeinenではなく中性名詞(グラス)のeinになっています。

 

まとめ

今回は以下の内容でドイツ語の定冠詞と不定冠詞、格変化について紹介しました。

  • ポイント①:ドイツ語の定冠詞・不定冠詞について
  • ポイント②:ドイツ語の格と格変化について
  • ポイント③:定冠詞と不定冠詞の使い分けについて

ドイツ語の冠詞の格変化は、ドイツ語初心者には最初の山場とも言われています。
ここで諦めず、繰り返しドイツ語に触れることで道が開けるかもしれません。

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