***基本回答1:【試験に出たら】
もし日本語の試験で、
「『泥棒が警察に捕まった』は能動態と受動態、自動詞と他動詞のどちらですか?」
という問題が出たら、
「能動態・自動詞」と回答してください。
そうしないとマル(OK/正解)がもらえません。
*** 基本回答2 - 【能動態でも受動態でもなく、中動態とでも解釈したい(※)】
>「泥棒が警官に捕まりました」って受動態でしょか?
はい、私も「それ、受動態でしょ」と言いたくなります。少なくとも意味は非常に受動的である。
a).「警察が泥棒を捕まえた」
b).「泥棒が警察に捕まえられた」
c).「泥棒が警察に捕まった」
上記3文を2グループに分けなさいと言われたら、ふつうにa). とb.c)に分けたくなる。
しかし、文法の理屈でいうと、a,c(能動態)、b(受動態)になる。なんか、納得しづらいですね。
さて「つかまる(捕まる)」とは何を表しているのか?
「つかまる」とは、
「つかむ・つかまえる」という状態が
「故意でなく人為でなく、
状況(なりゆき)の力により、自然に発生し、
かつ確立した状態」 のことだと考えます。
これはちょっと「能動態」と呼びたくない。「受動態」の方がまだ近い。個人的には「中動態」とでも解釈したい。。
例文:
「ゴキブリホイホイ(※)を仕掛けたら、ゴキブリが100匹もつかまった。うれしいなあ」
(※ 商品名です。ゴキブリを取るための罠のこと)
*「中動態」的な日本語の例文
「はああ、助かった。。。。」
「よし、分かった!」
※ 「中動態」は私の造語ではなく、文法用語です。
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****2: 【「捕まる」は、「能動態・自動詞」である、という考え方について】
一般論としては次のような説明になると思います。
***************
「捕まる」は受動態ではありません。能動態、自動詞です。
他動詞は「つかむ/つかまえる」。それに対する自動詞が「つかまる」です。
能動態・他動詞:つかむ/つかまえる
受動態(他動詞):つかまれる/つかまえられる
能動態・自動詞:つかまる
***************
たしかにこう考えるのが穏当なのでしょう。
私も、「形式的には」そう回答したくなります。
しかし、「その説明だと、なんだか、納得いかないよなあ」と内心で思っています。
(※注 「いや、私はその説明で十分、納得です」と思う人は、この先は、読む必要はありません)
どう納得がいかないのか? 次のような話です。
「『つかむ』の自動詞って何なんだよ? 意味わからん。自動詞っていうのは、「寝る」「行く」「歩く」みたいに対象がなくて、自分が自分だけで完結する動作を表すものでしょ。でも、『つかむ』っていうからには、つかまれる対象があるでしょ。絶対にあるでしょ。だったら、自動詞とかありえないじゃん!」
「はやく、このロープにつかまって!」
↑ これって自動詞なのか??? だって、結局、ロープをつかむわけで、なんか、すごく他動詞っぽいんですけど。
***3:【つかまる】は不思議な動詞
以下の例文をご覧ください。
1).「泥棒が警察につかまった」
2).「(ころばないよう、手すりに)つかまって歩く」
1と2は、どちらも「~につかまった」です。しかし、1が「泥棒が警察につかまえられた」のように受動的な意味に見えます。一方、2は「(自分が)手すりにつかまる」と能動的な意味に見えます。
これに対し、”In case 1. つかまる means *******, but in case 2. つかまるmeans $$$$$” のように答えているのを見かけることがあります。
わたしは、そういうIn this case 型の「場合分け回答」は、つまらないと思っています。言葉が一つなら、意味の根本は一つ。場合分けせず、ひとつで回答できないとダメだと思っています。
では、1と2の共通項はなんなのか?
「AがBにつかまる」の基本イメージは「Aは動き回っている。Bは動いていない」です。
-「ゴキブリホイホイを仕掛(しか)けたら、ゴキブリが100匹つかまった」
(※ゴキブリは動いている。ゴキブリホイホイ(罠)は動いていない)
- 「老人が、手すりにつかまって、歩いている」
(※老人は動いている。手すりは動いていない)
- (崖から落ちそうな人に対し)
「はやく、このロープにつかまって!」
(※ロープは動いていない。その人は、落ちそう(動きそう)になっている)
では、「泥棒が警察につかまった」はどうなのか?
泥棒も警察も人間で、動いているではないか、と。
(コメント欄につづく)